第22章 出張編
「お二人とも再会おめでとうございます。僕は早々に失礼させていただきますね。名無しさん、またお会いしましょう」
「あっ、はい! クリスさんもお疲れ様です、こんな状態ですみません!」
「何をおっしゃいます、この人あなたがいなくて大変でしたよ。どうぞお二人の時間をお楽しみくださいね。――では部長。お先に失礼します」
「ああお疲れ。また明日な」
部下に手をひらひらさせたあと、ヴィクトルの憧憬の眼差しはあなたに向かう。
「嬉しくないの名無しちゃん」
「嬉しいよ……ものすごく…っ」
「よかった。じゃあ早く行こう」
ようやくあなたの体を離した彼は、すぐさま手をつなぎ、自分の荷物を持ってその場から歩き出した。
駐車場に停めた車に荷物を積み、運転席と助手席に座ったとたん、また二人の愛が燃え上がる。
「ん、んう」
彼の情動は想像以上だった。
いったい今まで、どれだけ耐えがたかったのだろう。
「ヴィクトル……運転ができない……」
「もうちょっとだけ……」
本当は自分だってこのままずっとこうしていたい。
でも家に帰れば、もっと彼の腕に飛び込める。そう考えて我慢した。
ようやくエンジンをかけて走り出す。
運転中も、横からの優しい視線を意識する。
集中しないとだめなのだが、彼はいつもそうさせてくれない。
疲れもあるのか、色気の滲む切れ長の目元の行方が、気になって仕方なかった。
「はあ。俺は出張のたびにこうなるな」
「ええっ、次は慣れるでしょう。ふふ」
「慣れないと思う。すごく寂しくなったよ」
そうぽつりと言われて、いとおしい気持ちが一気に湧いてきた。
彼の言葉はすべて自分にも共通している。
運転中なのに抱きしめたくなって、もう少しだけ我慢した。