第22章 出張編
その日、あなたはヴィクトルの高級マンションにいた。
キッチンカウンターの紙袋から、冷蔵庫へ手早く品物を詰めていく。
「……よし、彼の好きなものも買ったし、これで準備万端だ!」
満面の笑みを浮かべ、気づけばもう夕方だと知り、出かける支度へ取りかかった。
今日は二週間以上に渡る海外出張からヴィクトルが帰国する日だ。
だからこうして買い物や掃除などを行い、彼がまたすぐ生活できるようにしていた。
海沿いの国際空港には一時間ほどで到着した。そこからターミナルへ向かう。
夜でもにぎわう空間には、バスを待つ人や行き交う人々があふれていた。
「ああ、もうすぐだ。出てくるかな……」
あなたはニットカーディガンにブーツ姿で、両手をぎゅっと握りしめ、ゲートを見つめていた。
こんなふうに一人で彼の帰りを待つのは初めてだった。
まだ婚約の身なのに、確かに繋がっていると感じて、胸の奥が落ち着かない。
「……名無しちゃん!」
「あっ……ヴィクトル!」
ぞろぞろと現れる人の中で、いち早くヴィクトルの姿を見つけた。
背の高い彼はロングコートを羽織り、はじけるような笑顔でこちらへ向かってくる。
あなたも照れながら手を振っていると、駆け寄ってきた彼に思いきり熱いハグをされた。体が浮き上がるほどだ。
「……ああ! ただいま、会いたかったよ!」
「うんっ、私もだよ!」
彼はそばにスーツケースを置いたまま、あなたの頬に何度もキスをしてくる。
久しぶりに知っている匂いに包まれ、ふらふらした。
するとヴィクトルは優しく見つめ、自然とあなたの唇に口づけをした。
彼が作り出すムードに眩暈が止まらず、あなたはただ吐息をこぼす。
「はあ……っ……び、びっくりした……」
「ふふ、ごめんね。ああ、来てくれてありがとう。帰ってきて一番に君に会えるなんて、これ以上の幸せはないよ」
にこりと告げられて、赤らんだ顔がほころぶ。
彼の抱擁は周囲の視線さえ気にしていないようで、あなたは浮ついた気持ちのまま見上げていた。
「……んっ? ヴィクトル、またクリスさんが見てるよ!」
「んん? いいよ全然」
熱視線にとらわれたまま彼の腕に包まれていると、クリスが音もなく近づいてくる。