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美オヤジを誘って囲われて救われる話

第22章 出張編


「うわあ、すごいですね。社長は止めなかったのですか?」
「止めないさ。なぜだかわかるか? 俺はな、最初に誓ったんだ。この女性のすべてを引き受け幸せにすると。何が起ころうが一度決めた誓いは男として破ることはない。だから今はほぼ彼女のために社長業をしている。部下にはこんな話言えないが、彼女の存在が、俺が仕事を頑張る理由にもなっているのさ」
「なるほど。素晴らしいお話ですね」

ヴィクトルが感嘆気味にもらすと、クリスは「本当ですか?」と小声で突っ込みを入れた。

「こんな風にな、若い嫁さんをもらうのは大変だという話だ。ヴィクトル、君は俺みたいになったらどうするんだ。女は変わるぞ。年齢でも変わるし、立場でも変わる。変貌していく彼女を愛せるか」

それは自分の経験からくる問いである。
責めや圧力ではなく、後輩への気遣いすら漂っていそうな哀愁の眼差しだ。

だがこの場にいる誰も、そして遠い地で待つ恋人のあなたでさえも、ヴィクトルの底にまである本気度は知らないのかもしれない。

「ええ、当然愛しますよ。人は変わるものだし、俺だって変わるかもしれない。でもきっと彼女は、そんな自分のことも受け止めてくれる、そう信じられる人なんですよ。だから俺も同じことができるんです。……驕りとかではなく、今の自分があるのは、彼女のおかげですからね」

ヴィクトルはそう話すとき、情景を思い浮かべるように穏やかだった。
言葉尻は柔らかく、おそらくビジネスの場では見せたことのない、ふっと出た笑みだ。

それを目の当たりにした男二人は、面食らった様子だった。

「……そうか。なるほどな」

社長はしばし言葉を発するのが遅れたが、立ち上がってヴィクトルに背を向ける。

そして高級酒が並ぶガラス棚から一本のボトルを持ってきて、彼のグラスへ注いでやった。クリスにもだ。

そんな自ら施してくれる姿を見たことのないヴィクトル達は、ありがたく受け取った。

「君は正しいよ、ヴィクトル。こういう話は、あの騒がしい盛り場では、たしかに出来ないよな」

社長はヴィクトルを見つめ、軽くため息を吐く。

しかし席に戻る前には、すでに機嫌は戻っていた。その表情には、家でしか見せない柔らかな笑みが浮かんでいる。

それから若い二人と、より深い乾杯を交わしたのだった。
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