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美オヤジを誘って囲われて救われる話

第22章 出張編


「俺のことだと? 散々話しただろう。学もない元整備工の不良が、独学で起業し小さな会社をここまで成長させた。運よく良い投資を受けてな。よくある話さ。他に何が知りたい」
「あなたの考えですよ。これまで何を大事にしてきて、何を諦めざる得なかったのか。そういった人生観を知りたいですね」

そんなことを飲みの場で言われたことがなかった社長は、一瞬言葉に詰まる。
ヴィクトルがふざけているようには見えなかったのだ。

「つまり、こんな上っ面の交流ではなく、俺ともっと深い関わりをしたいということか」
「ええ、その通りです。あなたさえよければ」

にこりと頼まれて、険しい思案顔を社長は浮かべた。
彼は綺麗にそられた顎を太い指でさすり、じっくりと考え込んだ。 

「……ふん。そうか、わかった。なら俺の邸宅へ来い。もっと高次元の話をしようじゃないか」

思いがけぬ提案により、場の空気はがらりと変わったのだった。





二台の高級車が、市内の高級住宅地のゲート内に入っていった。
白い宮殿のような邸宅に横づけられ、男達が降りていく。

だが相手の部下の姿はなく、社長とヴィクトル達だけだ。

以前昼食に招かれた際に使用した、テラスを一望できるダイニングルームを通り、隠し廊下を抜ける。

地下への螺旋階段を下りていくと、社長の最も私的空間であるバールームにたどり着いた。

意外にもシックな内装が気に入ったヴィクトルは、促されて椅子に深く座り、ネクタイを緩める。

緊迫した空気に見舞われるかと思ったが、社長は落ち着いた様子でテーブルに並ぶボトルを示した。

「ほら、自由に飲め。すっかり君もくつろいでるじゃないか」
「ありがとうございます。正直に言うと、ヒヤヒヤしてたんです。あなたの嗜好は大体分かってますからね」

ヴィクトルは苦笑まじりに素直に吐露した。
すると一人掛けのソファに座る社長は片眉を上げ、顔を近づけた。

「そんなに嫁さん怖いのか?」
「はっはっは! いいえまったく。とても優しい方ですよ」

そう明かす彼は、柔らかい表情そのものだった。
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