第22章 出張編
「ヴィクトル、くだらないこと尋ねてもいい?」
『何? いいよ全然、教えて名無しちゃん』
彼が瞬間的にちょっと真面目な顔を作ったのを見て、あなたは安心する。
「あのっ……ほんとに勝手な心配で申し訳ないんだけど、……お……女の子がいるとことか、行かないよね…?」
あなたは顔がかあっと赤らみ、質問自体を恥じて瞳が伏せがちになってしまった。声も最後小さい。
すると沈黙が生まれたため、恐る恐る画面を見やる。
彼は衝撃が走ったかのごとく目を見開いていた。
だがすぐに我に返り、身を乗り出す。そしてこう即答した。
『行かない。絶対そんなところ行かないよ、俺は。ああ、心配になっていたのかい? ごめんね、でも大丈夫、ありえないから。いいかい、よく聞いて』
「……ほんとう?」
『うん。本当だよ。まったく心配しなくていい。俺はそういう変なことは絶対にしないって、ここにある君への愛に誓うよ』
彼は左胸を掴むようにして、揺るぎない眼差しで訴えた。
それと同時に、あなたの表情が光を得たように明るくなっていく。
「そっか……よかったぁ。ごめんね、今そばにいないから、変な想像しちゃっただけなんだ」
『わかるよ。それは普通のことだからね。それにクリスと一緒だと言ったら、気になるのも当然だよね。でもね名無しちゃん、実はこれには訳があるんだ』
そう言ってヴィクトルは詳しく話してくれた。
元々二人で過去に色んなラウンジを訪れ飲んでいたのは、あまり女性慣れしていないクリスが彼女達とのコミュニケーションに慣れるためだったのだと。
「えっ……そうだったの? クリスさん、すごく慣れてるように見えたよ。物腰もソフトで紳士的だし」
『はは、そう言ったら彼も喜ぶだろうな。まあそうした練習のおかげかもね』
ヴィクトルは気軽に告げたが、すぐに反省した顔つきに戻る。
『でも、俺も場を盛り上げて呑気に飲んでいたのは事実さ。今よりも全然、きちんとした大人ではなかった。軽率だったよ』
そんなふうに省みる彼の話を、あなたも真摯に受け止めている。
『けれど、名無しちゃん。今はもう社交場には行かないからね。俺には君がいるんだから。傷つけることは絶対にしないよ』
「……ヴィクトル……ありがとう」
あなたは小さく頷いて、やがて彼を信じる笑顔を浮かべた。