第22章 出張編
セリアとの夕食後、帰宅したあなたは急いで風呂に入った。
どうしようか迷ったが、鏡のすっぴんを見てるうちに、控えめながらも可愛く見えるようにメイクを施した。
フェミニンなロングワンピースの部屋着をまとい、通話アプリを開く。
夜十時から、ヴィクトルとのビデオ通話が始まるのだ。
「やばい、なぜか緊張してきた……」
五分前から鼓動が鳴り出し、頻繁に鏡をチェックして待機する。
すると彼からの通話ボタンが画面に出てきて、あなたはすぐさま押した。
『お、名無しちゃん?』
「ヴィクトル! 大丈夫?」
『うん、大丈夫だよ。…あっ、見えた!』
ビデオに切り替えると、彼の笑顔がスマホの縦画面に現れる。
あなたは感動に胸が詰まり、しばらくほんのり染まった顔で見入ってしまった。
『ああ、やっと君に会えた。信じられないほど長かったよ。まったく、なんて可愛いんだ?』
独り言のようにまじまじとこちらを見つめ、表情が自然と緩んでいく男性に、あなたはただ魅せられる。
『……んっ? 大丈夫かい。どうしたの、元気ない?』
心配げに笑む彼の黒髪は濡れてウェーブが取れ、後ろに流すようにしていて色っぽい。
どうやら彼もお風呂上がりだったようだ。
質の良いシャツのボタンは上二つが開いており、つい鎖骨と胸元に目がいってしまう。
「いや、あの、ヴィクトルの顔こんな感じだったっけって、ぼうっとしちゃって……」
『えっ? おいおい、俺のこと忘れちゃったの、嘘でしょう』
彼が愕然とショックを受けたような面持ちになったため、あなたは大慌てで否定した。
「違う! そうじゃないの! あのね、知ってたけど、ものすごい格好良くて素敵で……改めてびっくりしちゃっただけ」
前にそういう話を聞いたことがあるのだ。恋をしすぎると相手の顔を思い出そうとした時、ぼやけてしまうのだとか。
彼に話したことはなかったが、実際付き合って最初の月は、離れているとき自分がどこか、夢うつつの気分になっていることがあった。