第22章 出張編
「本当のこと言いなよ、名無し。自分だったらどうよ」
「えっ……なにが」
「なにとぼけてんの。うちらの仲だよね」
「……うっ。…………まあほんとは……いやだよそりゃ。どっちでも嫌」
「ほらね! あーよかった分かってくれて! 理解ある女のフリすんじゃないよ! 22の小娘が!」
「はあっ? 年関係ある!? 私はねえ、セリアちゃんの心を落ち着かせようとしただけでねえ! ……だってさ、考えても答えが見つかるとは限らないんだよ、こういう問題は。私もさんざん嫌なことあったんだもん、マティアスのことで――」
大体のことを知っている親友の前でぽろっと名前を出すと、気分がどんより落ちてきた。
こういう話題のときは、元カレのことを必ず思い出す。たくさん苦しんできたからだ。
「ごめんねセリアちゃん……気持ちわかるよ。男の生理現象だとわかってても、複雑なものは複雑だよね」
「いや……私こそごめん。確かに名無しは大変だったもんね、あのクズと付き合って、頑張ってきたんだからさ……」
いきなりしおらしくなったセリアからも怒りのムードが消えてきて、二人はしみじみとしていた。
過去のことはもういいが、あなたの頭の中では少しずつ別の不安が広がっていく。
「ヴィクトルもエロサイトとか見るのかな……」
「うーん、どうだろうね。精力的なビジネスマンだからね。あの忘年会にいた彼らは」
鋭い指摘をさらりと受け、あなたも遠い目を宿す。
「サイトは別にしょうがないけどさ……まさかそういうこと、ないよね……今出張中だけど……」
離れているゆえに不安にどんどん覆われていく。今度は自分が藁にも縋る気持ちでセリアを見やってしまった。
「まあ落ち着いて。ヴィクトルさん、今どこにいるんだっけ。今日日曜で休みなんだっけ?」
「うん。週一は休めるみたい。昨日からルーマニアにいるって言ってた。その前はハンガリーに滞在してたけど平日だったから。ルーマニアだけまだ開拓中で支社がないんだって」
落ち着いてきた二人はスマホに視線を落としつつ語り合う。