第22章 出張編
その辺は自分もあまり気にしたことがないのだが、ヴィクトルは嬉しくなさそうな気がするので苦笑しておいた。
だが問題はそのあとだ。
セリアが突然豹変したかのように、芝居がかった顔つきでテーブルにしがみつく。
「でもね、名無し! ちょっと聞いてよ! この前ありえないことがあったんだけど、エリックの奴許せないっ!」
「え。なにどうしたの」
「向こうの家に泊まりに行ったらね、あいつ、一人の時パソコンでエロサイト見てたんだよっ!」
わああっとウソ泣きしそうな勢いで丸眼鏡を迫られたため、あなたは一瞬引いてしまった。
「いやエリックさんのそういう話、あんまり聞きたくないんだけど……でもねセリアちゃん、男なんだからエロサイトぐらい見るでしょ。どうしてわかったの? 見てるって」
あなたが寄り添って話を聞いていくと、パソコンを使わせてもらったときに履歴を見てしまったらしい。
「勝手に履歴見ちゃだめだよ。プライバシーでしょう」
「わかってるよ、でも調べものしてて消したやつ探そうとしたら、ずらーっと並んでるの見ちゃったんだもん!」
さっきまで男の裸なんてどうでもいいと豪語してた親友の、悲壮感漂う姿に同情心がわく。
確かにその画像の羅列は、女性にとってはショック極まりないものに感じた。
だがセリアの怒りのポイントは他にもあったようだった。
「えっ? 自分とはかけ離れた女性だったの? その動画の人たちが」
「そうなの! 派手なギャルとか手足長いモデルとか! 小柄で愛くるしい私と全然違うんですけど!」
騙されたと言わんばかりにわめくセリアに、あなたは難しい顔をしていたが落ち着いてはいる。
「それはびっくりするけどさ、全員自分にそっくりだった時のほうが怖くない? 自分だったらそっちのほうが恐ろしいよ。だってさ、ほかにそういう人がいたらそっちに行っちゃうかもしれないじゃん。だから、正常な男の範囲だと思うけどなぁ」
気が付くとセリアのじとっとした目に見つめられている。