第22章 出張編
「全っ然。そんなの普通だよ。依存ってのはね、こういう友達の付き合いも全部どうでもよくなって彼のことだけ考えたり、ほかには手がつかなくなるとか、そういうことでしょ? 名無しは違うじゃん、私と会ってくれたりさ。日常生活も普通に送れてるよね? 彼のSNSに張り付いて監視してるとかじゃないでしょ?」
「し、してないしてない。ていうか彼ってSNSやってるのかな…?」
「そんな時間ないか、忙しいもんねえ。あっでもさ、マックスさんはバリバリやってるわよね」
彼女が笑いながら相槌を打ったため、あなたは驚いた。なぜ知ってるのか尋ねると、平然とスマホ画面を見せてくる。
「ほら。忘年会のとき教えてもらったもん。やばくないこれ」
「ええーっ! なにこれっっ」
眼前に並んだ肌色の写真集から、目が逸らせなくなる。
ヴィクトルの大学時代からの悪友でもあり、同僚で営業部長でもあるマックスの、圧倒的な肉体美だ。
上半身裸で濃い金髪が濡れていたり、男らしくセクシーなポーズで流し目をしていたり。
それを衝撃の面持ちで、しばしがっつり見つめてしまった。
「ちょっと、名無し? 見すぎでしょ。確かに40に見えないよね、すっごい良い体してるよなぁこの人。こりゃモテるわ」
「うっうん……。これはすごいね。ヴィクトルともまた違う凄さがあるわ……」
「やだーっ彼氏と比べちゃって、いやらしいその言い方ぁ!」
「あのね、変な声出さないで――」
こんなものを見たと彼にばれてしまったら、大変なことになる。
ドキドキしつつも胸にしまっておこうと、真面目なあなたは自分に言い聞かせることにした。
自分だって過去の恋愛経験は一人だが長かったし、男の裸に免疫がないわけではない。
だがセリアは街の有名シアターに在籍する劇団員であり、男女ともに裸は見慣れてるとあっけらかんとしていた。
「でもさセリアちゃん。連絡先も交換したらしいけど、そういうのエリックさんは大丈夫なの? いやマックスさんは全然安全な人だと思うけどさ。ああ見えて紳士的だし」
「あー大丈夫大丈夫。自分も会ってるからね。てかマックスさん、エリックとも交換してたよ。すごいフットワーク軽いよねあの人」
「えっそうなんだ。私はマックスさんの知らないや」
そう言うと親友は「気を遣ってるんじゃない。ほんとはしたいと思うよ」と笑っていた。
