第22章 出張編
ヴィクトルが東欧出張へ行ってから五日が経った。
あなたの日常は仕事と家の往復に、料理や家事をしたりと変わりない。
だが時々国際ニュースをスマホでチェックしている。
「ああよかった、今日も何も起きてないな」
そうしてほっとして、しばらく彼のことを考え、また生活に戻る。
……いや、本当はどんな時でもヴィクトルのことを考えてしまっていた。
まだたった五日なのに、海外という遠い場所にいるからだろうか。
自分が一人になった感覚がして、それは久々のものだった。
でもヴィクトルは普段より更に仕事が大変だろうに、毎日メールをくれる。
「本当に彼って、優しいなぁ……」
温かい文章を見るたびにあなたは幸せな気分になり、ちゃんと安心もする。
やっぱり離れている分、何をしているか分からないため、時々不安にもなるのだ。
そんな心を彼のメッセージは包み込むように癒してくれた。
あなたは普段平日の出勤が中心だが、ある土曜日にブティックの店頭に立っていた。
なぜならヴィクトルの同僚である女性二人が、嬉しいことに訪問してくれるからだ。
夕方の人が少ない時間に、お洒落なコートとブーツ姿の華やかな二人組がやって来た。
一人は三十代半ばの大人の女性マグダで、もう一人は彼女の後輩的存在のケイトだった。
「名無しさん、来たよ~! お店すっごく美しいわね、門から庭園までの景色が映画みたいで足が止まっちゃった!」
「ありがとうございます、オーナーがこだわって作ったので、きっと聞いたら喜びますよ」
マグダに褒められたあなたも感激して出迎える。
感情表現豊かな彼女に比べ飄々と自由な性格のケイトも、あなたに会えて嬉しそうに緩いハイタッチをしてくれた。
彼女達はここへ来ることを楽しみにしていたようで、さっそく一階、二階とゴシックなディティールに満ちた洋館内を巡る。