第22章 出張編
そのあとも二人で色んな話をした。今日あったことや、旅先でのちょっとした発見、文化的な面白さなどだ。
『もうこんな時間だね。早く寝たほうがいいよ。明日も早いんだよね?』
『そうだね、早いけど……』
寂しい。もっと話していたい。
四十の男が対面ならまだしも、文章でそんなことを言えるはずもない。
『じゃあまた明日メールするからね。名無しちゃんもたっぷり眠ってね。お仕事のあとはリラックスもしてね☺️』
『愛してるよ』
そう続けて打つと、少し間があったあとにあなたはこう言った。
『うん。ありがとう。私もヴィクトルのこと大好き。愛してるよ😻』
彼の顔が緩むと、締めのメッセージが綴られていく。
『じゃあおやすみ。よく眠れますように』
『君もね。Kiss』
彼は真剣な顔で口づけの言葉を書いた。
するとしばらくして「キス」の絵文字とハートマークが返ってきた。
そうして二人の親密な時間はいったん幕を閉じる。
きっと今恥ずかしそうな顔をしていそうだ。
そうヴィクトルは妙に大人びた、熱のこもった瞳で思いを馳せる。
時間を見ると、三十分ほどやり取りをしていた。
十分な時間なのだろうが、あっという間である。
仕事をしているときは、たまに背中に張り付くように長々しく感じるのになぜだろう。
ソファにもたれかかるように背を預け、静まり返った部屋の天井を見つめる。
「ああ、顔が見たい……限界が早いな。俺は……」
彼女はこんなにも落ち着いて、強い包容力を見せてくれているというのに。
あと十三日もこの試練に耐えられるのか。
ヴィクトルは己の苦悩に頭を抱え始めていた。