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美オヤジを誘って囲われて救われる話

第21章 お返し


「これでちょっとだけ離れ離れになっても、心の支えがもうひとつ出来たな」
「えっ? もしかして旅行に持ってくの?」
「そうさ、当然だよ」
「ええ! それ仕事中というかスーツでも大丈夫なの? 結構目立ちそう、ヴィクトル余計にモデルみたいに見えちゃうよ」

あなたが仕事モードの彼の周囲の環境を懸念すると、彼は楽しそうに笑った。

「全然大丈夫だよ。装飾品も自由だし、この指輪は俺の婚約指輪なんだから。もちろん肌身離さずつけるつもりだよ」

にこっとウインクされてあなたのほうが赤く照れてしまった。

確かに彼ならば、何を身に着けても似合うだろうし違和感もない。
自分のものにしてしまう説得力が備わっているからだ。

「すごい嬉しいけど……でも気を付けてね、環境優先で大丈夫だからね」
「いやだ。絶対つける」
「嫌だってねえもう……意外なとこで頑固だなぁ」

二人が芝居がかったやり取りをすると、どちらともなく吹き出し、外で明るい笑いが生まれた。

こうして無事に婚約の証をお返しできて、安心感がわいたのだが。同時に潜んでいたある思いが去来する。

「そっかぁ……ヴィクトルもうすぐいないんだ。あと三日で……なんか寂しくなってきた。急に現実が……」
「そうだよ。だからずっと言ってるだろう?」
「うん……やだ、寂しいよ! いかないで!」
「わかった、じゃあ行かない」
「ちょっ、ダメだよそんなの、仕事でしょう!」
「じゃあ俺どうすればいいの?」

あなたは半分冗談のつもりだったが、彼に眉を下げられて見つめられる。
なので思わず柔らかい黒髪に手を伸ばした。

愛しい思いをこめて撫でていると、遠くの屋内のガラス扉がコンコンとたたかれる。

ひょっこり顔を出していたのは、にんまりした中肉中背の店主だ。

「お二人さん、お邪魔して悪いね」
「なんだいヤンさん。今すごく大事な話の途中でね」
「ごめんごめん。婚約を祝してちょっとしたケーキ用意したよ。食べる?」
「おっ本当に? それはありがたいな。さすが格別なお店だ。頂こうか名無しちゃん」
「わあぁ頂きたい、ありがとうございますヤンさん!」

二人の堂々巡りかつ熱いやり取りはこうしてひとまず中断された。

そのあとは可愛らしい飾りつけのケーキをぞんぶんに味わい、仲良く家路へと帰っていった。
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