第21章 お返し
「えっ…? 泣いてる、ヴィクトル! 泣かないで!」
「うん、ごめん、油断した」
彼はさっと指で拭い、あなたをすぐに力いっぱい抱きしめた。
「ありがとう……まさか今日いきなりこんなことをしてもらうとは……感動しすぎて言葉が飛んだんだ」
「……本当?」
尋ねると彼は頷いた。その表情はとろけそうに温かく、完全に素になっている柔らかい笑みを広げて。
二人の胸の間にある箱を、彼がとても大切なものとして丁寧に受け取る。
「俺にくれるの? こんなに素晴らしい特別な贈り物は初めてだよ」
「ふふ、嬉しいな。でもまだ中見てないよ。気に入るかな」
「気に入るに決まってるよ。……ああ、すごく素敵な指輪だ……」
彼は瞳に輝きを浮かばせて見入り、感嘆の声をもらす。
あなたが贈ったのは、自分の勤めるブティックと提携するジュエリーアーティストの作品で、数点しか作られないものだ。
男物の指輪は太めのゴールドで、美しい曲線から導かれる四角い台座には、光を当てるとわずかに青みがかる黒の宝石が眠っていた。
存在感は豊かだが悪目立ちせず、ヴィクトルほどオーラがある人ならばアクセサリーに負けることもなく、むしろぴったりだと思った。
そう説明すると彼も心から喜んでくれた。
あなたは了解を取り薬指にはめる。大きな手のしなやかな指に悠然と輝く姿を見て、自分も感動に包まれた。
「わあ、なんて素敵なんだ……。こんなに美しく繊細で、かつ威厳にあふれた指輪に俺もふさわしくなれてるかな?」
「もうなってるよ、ものすごく似合ってる!」
「そうかい? 嬉しいよ、本当にありがとうね。俺の名無しちゃん」
感情が抑えきれないヴィクトルにぎゅうっと抱きしめられて、あなたは胸板にもぐりこみ幸福を感じる。
こんなに喜んでもらえてよかった……そう心から安心した。
しばらくその場で佇んでいると、彼が目尻を下げて手を眺めながらこう言った。