第21章 お返し
「あの中華屋に行こうか。電話で聞いてみるよ」
「ほんと? いいのっ?」
「もちろんさ」
結局彼にお世話になってしまい、正直恥ずかしくなったが、助け船に感謝した。
あそこは二人の思い出の地でもあるし、飛び入りでも受け入れてくれるかもしれない。
恥を忍んでヴィクトルに任せ、あなたは洗面所に駆け込んでメイクアップをした。いつもより気合を入れる。
すると彼が予約を取れたと教えに来てくれて、そのままあなたの様子を珍しそうに眺めてきた。
「どうしたの、そんなにおしゃれして。すでに可愛いのに」
「ありがとう! ヴィクトルもいつも格好いいけど今日ちょっとお洒落してね!」
「ええ? うん、わかったよ」
彼が若干首を傾げたのであなたは焦り振り向いた。
「あれだよ、今日最後の会える日だから、特別だもんね」
「……ちょっと。最後とか言わないでくれるかい? 悲しくなってくるだろう」
「ごめんごめん、うそ!」
あなたがパニックの中いつもより適当に反応してしまうと、彼は去り際にくすくすと笑っていた。
ああ、こんなはずじゃなかったのに。
どうして自分は行き当たりばったりでバカなのだろう。
反省しながらもなんとか服とメイクを可愛く仕上げることが出来た。
一時間後、ヴィクトルと一緒に街の中心部にある本格的な中華レストランへやって来た。
淡い照明や壁紙、テーブルと椅子もモダンな店内は落ち着いた雰囲気だ。
ここへ来たのはまだ数回だが、彼の顔見知りの店主に案内され、二人は外の景色がのぞめる特別席へ案内された。
「わあ、またここ座らせてもらっていいんですか?」
「もちろんだよ名無しさん。お二人はもううちのVIPだからねえ。今夜も特別な夜になりますように」
中年のヤンさんは気さくにそう言ってくれ、あなた達は心が躍る気分で顔を見合わせた。