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美オヤジを誘って囲われて救われる話

第20章 大晦日


新年の祝砲は、三十分以上も続いた。
あなた達はスパークリングワインで乾杯し、寒空を忘れるほど朗らかにお喋りをする。

そんな中、彼がこんな事を口にした。

「ねえ名無しちゃん。俺達いつ結婚する?」
「うーんと、そうだな。今年したい!」
「ほんとっ?」

すると彼がまばゆい笑みで見つめてきて、あなたは思い切って言ってよかったと思った。

「よし、今年しよう。約束ね」
「うんっ。でも仕事大丈夫?」
「もちろん大丈夫さ。休暇だってばっちり取るからね」

やる気に満ちている横顔がすでに頼もしい。

「でも君の仕事のほうこそ大丈夫かな? なんでも言ってね。一緒に調整しよう」
「うん、ありがとう。……ふふ、楽しみだなぁ。ほんとうに夫婦になるんだね、私たち。信じられないなぁ」

その特別な関係を表す言葉は、二人にいっそうの笑顔をもたらした。

「ねえねえ結婚したらどこに住むの? ここ? ……あっ、ヴィクトルの家なのに図々しいか。ってすでに悠々自適にくつろいじゃってるけど、はは」
「いや全然いいよ。ここはもう二人の家なんだから。……でもつまらなくない? リフォームしてもいいし、どこかに家を買って、そこを一から作っても――」
「えええっ!?」

あなたは隣でいろいろとイメージを広げるヴィクトルに仰天した。

「ちょっ、ちょっ、無理無理無理! そこまでのお金は……!」

当たり前だが持ってない。
自立した社会人とはいえ二十代前半の自分と、ただでさえ経済的な開きがある年上の彼では、感覚も違うのだろうけれど。

「もちろん、ゆっくり考えよう。ねっ、#名無し#ちゃん。何も心配いらないから」
「う、うん…?」

彼の包み込むような表情が気になる。
けれど今これ以上議論してもうまくいかない気がした。
先延ばしにしても同じなのだが。

愛する人と一生を共にする覚悟も愛も、十分ある。
それでも結婚というのは、考えれば考えるほど現実的な事柄なのだ。

ドキドキしながら、あなたはまだ鳴りやまぬ花火の下で、彼の温かな手に繋いでいた。
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