第20章 大晦日
こんな幸福があるだろうか。
去年の大晦日とは大違いだ。
その時も元カレとひと悶着あり、一人悲しい年末を過ごしていたのを思い出す。
「……そういえばヴィクトルは、いつもどんな年末年始だったの?」
「俺はねえ、昔は家族とか友人と集まってって感じだったけど。昨日みたいなね。でもここ最近はずっと一人だったな。仕事したり家で飲んだり。あんまり行事を感じる雰囲気でもなかったね」
彼がやや自分を憐れむ口調で苦笑したため、あなたは驚いて見つめる。
「そうなの⋯?」
「うん。だから今年はこんな風に、幸せの絶頂みたいに過ごしている自分が信じられないよ」
そう話す照れくさそうな笑顔に、あなたは胸がやたらと締めつけられた。
自分と勝手に重ねてしまったからというよりも、なにか強い想いに突き動かされる。
そうしてテーブルにあった彼の手を握った。
「おっ……どうしたの?」
「これからはいつも一緒だね。二人とも、もう寂しくないよね」
彼は寂しいなんて言ってないのに、一緒こたにしてあなたは微笑もうとする。
なぜだか分からないけれど、少し物悲しい気分になっていた。
人は幸せを感じすぎると、感傷的になるのだろうか。
「名無しちゃん、こっちにおいで」
「…えっ? こっちってどっち?」
「俺の膝の上」
食事中にそう言われてあなたはまごつきながらも、言うとおりにした。
ゆったり開いた彼の太ももの上にお尻を乗せ、視線を合わせた。
彼の普段涼やかな黒い瞳は優しく、けれど少し心配そうな愛情深さを浮かべている。
あなたはこの眼差しに弱かった。
また顔を隠すように、彼の首に腕を回した。
「ヴィクトル……」
「うん」
背中を優しく撫でられて、ちょっぴり情けなさもあったが、感謝の気持ちがそれ以上にあふれ出てくる。
「⋯⋯去年まで寂しかった」
「うん……」
背中に当てられていた手があなたをそのまま優しく抱きしめる。