第19章 忘年会編
「うっ、可愛いなぁヴィクトル⋯⋯おはよう〜朝だよ〜」
小声で嘘をついてみるが、まったく反応がなかった。
珍しい姿をまじまじと見つめたあと、あなたは微笑んで彼の額にそっとキスを落とした。
「ふふ。おやすみヴィクトル。休んでね」
休みに入ってからも家で仕事をする時があると言っていたから、疲れもあるのだろう。
そんな中でクリスマスを含め、自分との時間を作ってくれた彼のことが、なおさら愛おしく感じる。
肩まで薄いブランケットをかけて、あなたは静かに部屋を出ていった。
彼が寝てるということは、これから1人で乗り切れるだろうか。
ちょっぴりまた緊張が宿ってきたが、リビングとその近くのオープンキッチンには、驚きの光景が広がっていた。
テレビ前の対面ソファでは、マックスとミロ、そしてセリアが騒がしく乾杯している。
若々しい彼らのノリは合うようだ。
そしてキッチンには、二人とも黒縁眼鏡のエリオとエリックが珈琲を入れて運ぶところだった。
「あっ、ケーキにですか? すみません私も手伝いますよ!」
「大丈夫だよ名無しさん、これで最後だから。――ところで彼はあの著名なレストランの次男なんだってね。道理で珈琲の淹れ方が卓越しているはずだ」
「そうなんですよ。エリックさんの淹れてくれた物すごく美味しいんです。ていうか飲み物全部!」
あなたが興奮して伝えるとエリックは照れて謙遜していた。
エリオも珈琲やワインに造詣が深いらしく、なんだか名前も近いしあなたは和んでくる。
「そういえばなんとなく雰囲気も似てますよね〜。お二人ともキリッとして眼鏡も素敵だし、洋服の色使いもばっちりだし」
褒めたつもりなのだが2人が一瞬目を丸くしたので我に返る。
「あっすみません馴れ馴れしくて、つい職業柄装いに触れてしまって⋯!」
「いや構わないよ、プロに褒められるのは悪い気しないな。うん、確かに君には親近感がわくかもしれない、エリック。アンドレイ、君はどう思う?」
彼の言葉に皆がキッチンカウンターの中を見やる。そこには物静かに、かなりの長身で体格に恵まれた坊主頭の男性がいたのだ。
「ああ。⋯⋯似ているな。きっと俺達と波長が合うはずだ。あちらのテーブルよりな」
寡黙な彼の鋭い指摘に、エリック含め皆はくすりと笑った。