第19章 忘年会編
「あ〜。なんだか皆きちゃってますねぇ。体育会系のバカさ加減が出てます。さぁエリオ。僕たちは美味しいワインでも開けましょうか。あなた好みの南米ものを持ってきたんですよ」
「いいね。君は観察眼が鋭いな。さあ乾杯しよう。ミロとアンドレイは――まだビデオに夢中だな」
そう言って意外な組み合わせの2人は優雅にワイングラスを傾ける。
唯一ボート部のメンバーではなく、理路整然とした性格も合っていた。
問題はこの後である。
ソファで足を開いてもたれかかるマックスは、つまらなそうに遠くを見つめ出した。
「あー毎年同じ流れで刺激が足んねえなぁ。そうだ、女の子でも呼ぶか」
「⋯⋯やめろ、呼んだことなんかないだろ。ここに入れるなよ」
酔いどれのヴィクトルが目を閉じたまま厳しく反応した。
もう一人ぴくりと耳を立てたのは堅物のアンドレイだ。
「女は呼ぶな。気を使う」
背筋がまっすぐな彼が、ひときわ低い声で述べると皆が一斉に笑った。
「何がおかしい」
「お前が女に気を使ってるとこなんて見たことねーよ! むすっとして無視じゃねえか」
そう突っ込まれ、アンドレイは不本意な顔を向ける。
「そんなことはない。お前のように誰にでもいい顔をしないだけだ、マックス」
「ハハッ。女性全般に優しいと言ってくれないか? 優しさとオープンマインドはな、人付き合いの基本なんだよ」
正論でも誰もマックスに賛同はしない。
ここからは皆だらけてきて、思い思いの行動が目立ち始めた。
「ああ、眠いな⋯⋯名無しちゃん⋯⋯」
「あれえ? ヴィクトル、そこで寝たら邪魔だよ。今から試合の続き見るんだからさ。寝室行って寝てよ」
「ああ⋯⋯」
「えぇ? まだ寝んなよおい! これからだろうが、お前一人だけ年寄りか?」
「リモート続きで疲れてるんだろう。寝かせてやれよ」
おもむろに立ち上がったフロリアンが、長い腕を伸ばして屈伸する。
「じゃあ俺もそろそろ帰らないとな⋯⋯娘たちにもおやすみ言わないと」
「おい正気か? まだ9時過ぎだぞ、今日ぐらいいいだろう! お前の娘たちも小さくて覚えてねえよ献身的なパパの姿なんか」
「ひどいこと言うな! 覚えてるに決まってるだろう、子供の記憶力を舐めるんじゃないぞッ」
カリカリする社長の珍しい姿は皆になだめられ、マックスが責められていた。