第17章 実家編
「⋯⋯名無しちゃん! うん、よく頑張ったね。君は凄いよ、偉かったよ。一人でよく立ち向かったね」
「うん! へへ、ありがとう。褒めてくれて」
彼を見つめるあなたの瞳は、純粋な嬉しさに満たされている。
ヴィクトルは愛しい思いがあふれ、さらに強く両腕で抱きしめた。
その時間が長かったため、少し心配になってくる。
彼の気持ちは大丈夫だろうかと。また余計な気がかりを増やしたんじゃないかと。
あなたは思いきって尋ねてみた。もう心にしまうことはしない。
すると彼は安心させるように瞳を柔らかくする。
「俺は大丈夫。本当言うとね、腸が煮えくり返ってるよ、そいつに対して。ごめんね、怖かったら」
「えっ? 平気? そんなに怒んないでね、血圧上がっちゃうよ」
あなたが半分本気で彼のこめかみを優しくほぐそうとすると、小さな笑いが漏れてきて、あなたの上半身はより近くに抱えられた。
「君って子は⋯⋯俺の心配はいいからね。俺は君が心配なんだよ、名無しちゃん。⋯⋯でも、ほんとに教えてくれてありがとう。いいかい、何かあったらすぐに言って。電話でもいい、いつでも平気だから」
「うん、わかったよ。すぐ言うよ。そしたら飛んできてくれるの?」
あなたは彼の背中をさすりながら問う。
すると彼の黒髪が頬をなでるように上下に動いた。
「そうだよ。飛んでいって君に近づく奴をぶん殴ってやる」
「もう。まだすごい怒ってるじゃん、大丈夫だよ。偶然会っただけだし、もう無いんだからね」
あなたは何故か立場が逆転したかのように、彼の髪を優しい手つきで梳きながら微笑んだ。
ヴィクトルの切なげな面持ちが少し可愛らしく、愛おしくて見つめ合ってしまう。
「⋯⋯ああ。本当に君が好きだ。俺はどうしたらいい」
「そのままでいいってば。私も大好き。ヴィクトルのこと」
あなたはくすくすと嬉しそうに笑いながら、そのあとしばらく彼の腕の中で、何度も愛のこめられたキスをされていた。