• テキストサイズ

美オヤジを誘って囲われて救われる話

第17章 実家編


「⋯⋯名無しちゃん? ごめんね、俺が何でも話してっていったこと。もし嫌なのに、無理に話さなきゃなんて考えてたら、それは違うし言わなくていいんだよ」
「ううん、そうじゃないの。雰囲気を壊したくないだけなんだ。私はヴィクトルにそう言ってもらえて、本当にほっとして嬉しかったよ」

そう本心を伝えて、あなたは払拭するように覚悟を決めて口にした。

「実はね、実家に帰ったとき、精肉店でマティアスに偶然会ったんだ。それで話しかけられてさ」
「え?」

彼の表情を見上げると、本当に予想外のことだったらしく一瞬でシリアスな顔つきになり、眉間に皺が寄った。

「それで、何か言われたのかい? 何があったの?」
「うん⋯⋯私に謝ってきて、友達に戻れるんじゃないかって言ってきた」

そう話すと、ヴィクトルは怒りと不愉快さを露わにした。言葉を押し殺し、彼がまとったピリピリした空気にあなたもやや圧倒される。

「馬鹿なんだな、そいつは⋯⋯」
「うん。バカなんだ。あんまり人の気持ちが分からないんだ、彼は」

瞳を沈ませたあなたは、ヴィクトルの手をぎゅっと握って、こうも伝えた。

「でもね、私言い返したよ。もうあんたのことなんか考えてないし、話しかけないでって。すごいでしょう? だから大丈夫だよ、ヴィクトル。心配いらないからね」

彼に笑みを向けたが、無理して作ったのではない。心からの宣言と清らかな達成感も入っていた。

そしてそれがヴィクトルにはまっすぐに伝わる。あなたの気持ちはいつも彼にだけは何の曇りもなく、胸の中に伝わっていくのだ。

ヴィクトルは呼吸をするのを一瞬忘れたかのように、驚き瞳を揺らしたが、すぐにあなたのことを力強く抱き寄せた。

内容はもちろんだが、あなたがそうしてふっきれた顔で喜びとともに伝えてきたことが、彼の心を大きく震わせたのだった。
/ 292ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp