第17章 実家編
年末に彼と会う約束があったあなたは、その前に勤務するブティックにいた。
冬休暇に入った洋館風の店内で、オーナーのイリスと共にジュエリーアーティストの見本品を見ている。
「どう名無しちゃん、ほんとにこれにするの?」
「うん! やっぱり一番素敵だよ、男らしさと優美さが調和してて、彼にぴったりだと思う」
「ふふっ。いいセンスだと思うわよ。じゃあ指輪サイズも伝えてあるから、これを頼みましょう」
カウンターに並べられた品を二人で見下ろし、あなたはうっとりと熱いため息を吐いた。
これは前もってカタログで選んだ、ヴィクトルに贈るための指輪なのだ。
「イリスさん、本当にありがとう。お店と提携する皆さんの憧れの品々からオーダーできるの、すごく嬉しいよ」
「いいのよ、当たり前じゃない。名無しちゃんの一大イベントなんだから。なんだっけその、メルヘンチックなアイテムの――」
「婚約の証だよ!」
「ああそうそう、それそれ。ヴィクトルも幸せよね〜こんな可愛い女の子から素敵な指輪もらえて」
ふわっと耽美的な黒ドレスを着た巻き髪の淑女が、あなたの肩を撫でて微笑んでくれる。
「でも大丈夫なのよね? 貢がされたりしてないわよね?」
「もうしてないってば、これのお返しなんだから。へへ」
あなたの右手指に光る可憐なリングに、彼女もほっと納得した顔で頷いた。
「イリスさんも今度会ってくれるんだよね。びっくりしたけどありがたいよ。どうかお手柔らかにね」
「なにそれ、私優しいでしょう? お母さんともドキドキしちゃっててさ、美容院行かないと。気合い入ってるわよ」
「ええっ、普通でいいよ。二人ともすでに綺麗でしょ」
普段はオーナーと従業員の関係だが、あなたは母の親友のイリスと昔に戻ったみたいに笑い合っていた。
こうして両親や家族同然の皆に、彼との仲を堂々と話題にできることは、とても嬉しくありがたい気持ちでいっぱいだった。