第17章 実家編
「あの、そういえばヴィクトルのご両親は大丈夫だった? 二人とも別々にクリスマスお祝いすることになったのかな?」
『いやそれがね、俺も驚いたんだけどさ。お袋が家にいたんだよ。親父が明らかに嬉しそうでやけに俺に優しくしてくるから、なんか気持ち悪くてね。それで早く帰ってきたんだ』
「ええっ?」
一見面白い話なのだが、彼が言うには自分達の交際の話題がきっかけで、父と母は以前よりも話をすることが増えたそうだ。
長らく1人だった独身息子の変化に、普段表に出さなかった心配や喜びなどの親心が顔を出しているのだろう。
「そっかぁ。私も詳しくは知らないけど、話すことが増えたなら嬉しいなぁ。ヴィクトルのお父さんはお母さんに戻ってきてほしいんだもんね」
『だと思うよ、素直じゃないけどね。会うたびにグタグタ言ってたからこれでうまくまとまるといいんだけどな』
そうため息まじりの彼にあなたも深く共感して頷く。皆少しずつ良い方向に変わってきているサインは、実際に喜ばしいことだ。
『ああ、早く君に会いたいな。不思議だね、昨日の朝まで一緒にいたのにすごく遠くのことに思える』
「そうだねぇ。私も変な感じするよ、ヴィクトルがいるのが当たり前だったからかな。実家にいると余計に寂しく感じるんだよね」
二人で話していて、ふと思った。もう彼は家族と同じぐらい、もしくは自分の中でそれ以上に大きな存在になっているのだと。
親への愛情とはまた違う、特別な親愛と深い愛慕が、体に備わっている感覚だ。
「ヴィクトル、愛してる!」
『うぉっ。急にどうした名無しちゃん。嬉しいよ、俺も愛してる。大好きだからね』
彼の照れた声から優しい表情が浮かんできて、自然と頬が緩む。
その夜は少し長めにお喋りをした。そして明後日会うの楽しみだねと再び言葉を交わして、ちょっぴり寂しさを感じながら、おやすみを伝え合った。
「あー⋯⋯早く顔が見たいなぁ」
電話を終えたあと、あなたはまたベッドに寝転がる。
今日の目まぐるしい感情の最後に、彼を想って目を閉じた。
このまま眠りにつきたいほど、胸のうちは和らぎ、安らぎに満ちていく夜だった。