第17章 実家編
「ヴィクトル、もう帰ってきたんだ。電話してみようかな?」
あなたはドキドキしながら、きちんと返信をしたあとに「時間あったら電話してもいい?」と尋ねてみた。
するとほとんど待たないうちにスマホが鳴る。彼からの着信だ。
「⋯⋯あっ、ヴィクトル? 今大丈夫? ありがとうかけてくれて」
『大丈夫だよ、どうしたの? 何かあった?』
彼の真剣味のある声音にあなたは慌てて否定する。完全に違うとは言えなかったけれど。
「平気平気。もう大丈夫だから」
『⋯⋯もうっ!? って何? 教えて名無しちゃん、大丈夫だよ俺覚悟してるから』
切羽詰まったヴィクトルはきっと、最悪の想像をしたのかもしれない。今日初めて父に直接二人の交際について話すと彼にも言っていたからだ。
『お父さん、怒ってた? やっぱり、反対していたかな』
「いやっ、違う違う。その、最初心配すごくされてて、ちょっと一悶着あったんだけど、もう大丈夫。ちゃんと話せたから。詳しくは会った時に伝えたいな。いい?」
『うん! もちろん。そうか⋯⋯ごめんね、名無しちゃん。一人で大変だったよな⋯⋯本当は俺がきちんと説明しないといけないのに、挨拶が遅れてて――』
「そんなことないよ、皆忙しくてタイミングを図ってただけだし、問題ないよヴィクトル。不安にさせちゃってごめんね、でも全然大丈夫だから。明後日全部話すよ。ねっ?」
あなたの深刻ではない伝え方に、彼も幾分か落ち着いたのかもしれない。しっかりと分かったと言ってくれた。
問題といえば親の話だけでなく元カレのこともあったのだが、それも会った時に話そう。
今日起きた重い事柄は、以前の自分ならウジウジして一人で抱え込んでいたかもしれない。でも今はヴィクトルがいてくれて安堵感が芽生えていた。
彼なら自分の色んな思いも受け止めて、一緒に向き合ってくれるという信頼も生まれていたのだ。