第17章 実家編
翌日の昼は行きつけの精肉店に母と車で向かう。
祖父母がいたときはお手製の七面鳥の丸焼きを作っていたが、今では手軽に出来たものをお店で注文をし、休みの日はゆっくりするという方針になった。
両親も自分も休めるし、皆が好きに飲んで食べたりできるため、こんな大人のクリスマスも気に入っている。
「いらっしゃい奥さん! あれ、今日は旦那さんは? ビール用意したのに。飲む? お嬢さんも?」
「あっ、いえ私は運転があるので。お母さんもらえば?」
「いいの? じゃあいただきま〜す、ふふラッキー」
店内は混雑していて、肉のガラスケースの前での待ち時間に店主がビールグラスを配っている。
これはいつものサービスらしい。
母がカウンター端に受け取りに行くと、その場で近所の知り合いに話しかけられていた。
あなたは邪魔にならないように出口付近にいたのだが、信じがたい事が起きる。
「あ、いらっしゃ〜い。そちらも丸焼きね、5人前。ちょっと待ってね、ビール出しますよ〜」
「お前もいるか? マティアス」
「いやいい。昨日飲みすぎちゃってな」
隣の父親に気怠そうに答える金髪の若者は、あなたの元彼のマティアスだった。
地元が同じなため、出会う確率はゼロじゃない。
あなたは硬直してつい彼を目に映してしまう。すると彼は振り向き、驚きを浮かべた。
そしてあろうことか、ズボンに両手を突っ込んだまま向かってくる。
「よお」
「⋯⋯⋯⋯」
「無視かよ。親父さんは?」
「⋯⋯後で来る」
あなたは視線を沈ませ、動揺をなるべく出さないように短く答えた。
母を探すがまだ他の知り合いに話しかけられて喋っているようだ。
「なに⋯⋯? 用ないでしょ」
「冷たい顔すんなよ。普通に話す権利もないのか?」
あなたは彼の後ろで気を使って離れたところでビールを飲む、マティアスの父親を見た。
彼は優しく微笑み挨拶してくれたので、あなたも会釈をする。
3年も付き合っていたから、彼の家族もよく知っていた。皆気さくでいい人で、嫌な思いをしたことはなかった。