第16章 真相編
あなたのくりっとした瞳が可愛らしく近づいてきて、ヴィクトルは苦笑した。
「参ったね。君には隠せないな。⋯⋯名無しちゃん。実はね、来月の出張、2週間に延びちゃったんだ」
「えっ、ほんとう? そんなに長いの? 大変だねヴィクトル」
思ったよりも普通に反応されて、ヴィクトルは黒い瞳を瞬かせる。
「え⋯⋯なんかあっさりしてないかい? 俺はものすごく寂しいんだけどね、今から」
「⋯⋯あっ! もちろん私も寂しいよ。でも仕事だし、寂しい〜やだ〜とか言えないでしょう? そんなのわがまま女だよ」
そんなことはない。すごく可愛らしい。
あなたがもしそうやって抱きついてきたら、きっと彼は有頂天になるだろう。
「⋯⋯いやいや。俺は、どうかしている。ああ⋯⋯君のことが好きすぎて、最近調子が⋯⋯」
「ちょっと、大丈夫? もう心配ないよ。ヴィクトルになんでも言うし、私のことも心配いらないよ。ね?」
だから思い悩まないで、と手をぎゅっと握られて、ヴィクトルは一瞬だけ手袋を外して握り返した。
「君の手冷たいよ、名無しちゃん。なんで早く言わないの」
「ふふ。照れてる? ヴィクトル」
年が大きく離れた若いあなたにそう微笑まれて、彼は気恥ずかしそうに緩やかな黒髪を掻いた。
あなたといると、余裕がどんどん失われていく。
しかしそれは悪いことだけではなく、そんな自分も彼は最近受け入れられていた。
なぜなら途方もない幸福を一緒に感じられているからだ。
「君の都合が合えば、時間があるとき顔が見たいな」
さりげなく横目で見つめ、口元を上げて伝えてみると、あなたはさっと頬を赤くした。
瞳をさまよわせたのち、小さく頷く。
「うん、私もそうしたいよ。忙しくないとき、通話しようね。楽しみ」
「うん。ありがとうね。名無しちゃん」
彼はほっとした笑みを浮かべて、少し身を寄せてあなたの頬に軽くキスをした。
にこりと笑いかけると、あなたはまた照れが募った柔らかい笑顔になる。
付き合ってしばらく経つが、いつも自分にドキドキしてくれる愛らしいあなたのことが、ヴィクトルは本当に好きだった。触れるたびに大切にしなければいけないと、より強く思っていた。