第16章 真相編
「うっ⋯⋯うう⋯⋯ありがとう。私も⋯⋯私もだよぉ⋯⋯」
「ああ泣かないで。俺も泣いちゃうでしょ」
そう笑ってあなたの目と鼻を拭ってくれた。ようやく彼の目元に細かい皺が刻まれ、微笑みが浮かぶ。
「知ってると思うけど、俺は全くだいそれた人物じゃないよ。情けないし弱い」
「そんなことないよ。ヴィクトルは強くて温かいよ。でも弱くてもいいよ。前にも言ったけど⋯⋯」
二人は見つめ合いながら、また思いを近づけていく。
「じゃあ君にお願いがある。俺には何でも話して」
「⋯⋯え?」
「君がひとりで傷ついたりするのは耐えられない。苦しいんだ」
彼はそっと呟くように吐露した。
一瞬だけ見せた姿にあなたは引きつけられる。
「伝えるのが大変なことは分かっているよ。でも、俺はそのためにいる。君を一生守っていきたい」
大切なものに触れる手つきで、彼はあなたの頬を親指で撫でた。
瞳は憂いを背負っている。まるで背景に何かあるかのように。
「でも、重荷になるでしょう」
「二人で背負うものでしょ、君一人にさせないよ」
そう言い切った彼に、あなたは背中まで抱きしめられているような感覚を味わった。
思わず胸に飛び込んで、「ありがとう」と何度目かの言葉を伝えた。
「わかったよ。出来るだけ言うね」
「⋯⋯うん。ありがとう、名無しちゃん」
頭上から微かにほっとした息が聞こえた。
同様にあなたにも安心が広がり、孤独や寂しさが薄れていく。
彼の表情は気になったけれど、あなたにも背負う覚悟はある。
たとえまだ、彼のことをすべて知ったわけでなくとも。それでもなお、二人の絆は揺るがないのだと。
「ああ、名無しちゃん。いいかい。今日は君を抱きしめたまま眠るからね」
髪の後ろをあやすように梳かされて、あなたは瞳を瞑ったまま頷き、ずっと大好きな彼に身を任せていた。