第16章 真相編
帰宅したばかりでスーツ姿の彼を、リビングの広い円形ソファまで連れてくる。
彼はジャケットを脱いでネクタイをゆるめ、硬い表情で腰を下ろした。
心配したあなたは隣に寄り添って話を聞くつもりだった。
「君に話すことがあるんだ」
「⋯⋯えっ。うん。なに?」
彼の顔色は思い詰めたように暗く沈んでいる。
それにつられ、あなたの胸が急にざわめいていく。
仕事で何か取り返しのつかない事が起きたのかと思ったが、違う気がした。
――もしかして、自分とのこと?
最近の嫌な出来事から関連づけて、膝を指先できゅっと握る。
嫌だ。
嫌だ。
別れるなんて、言わないでね。
そんなふうに最悪を想像して、こらえる瞳はヴィクトルを映す。
しかし彼はあなたをじっと見つめながら、こう口にした。
「君がうちの女性社員にされたことを、今日部下から聞いたよ。本当にごめんね、名無しちゃん。君をたくさん傷つけた。俺は守れなかった、ごめん」
真剣に謝る彼のそんな重苦しい声音は、聞いたことがなかった。
あなたは完全に虚を突かれ、言葉が奪われる。
「⋯⋯えっ? 聞いたの? 誰から?」
「カイラという女性の部下だよ。あの日、君と少し話をしたと言っていた」
詳しく教えられた話によれば、あのお手洗いで出会ったヴィクトルの部下の女性が、責任を感じて彼に伝えてくれたのだという。
なかば放心状態になったが、まず別れ話でなかったことに、あなたは深くほっとした。
だが彼のことを、とんでもなく落ち込ませてしまったのだと知る。