第16章 真相編
マンションに着いてから、あなたにどう話を切り出そうか。そう考えながら苦悶の顔つきで上階へ向かう。
玄関コードを入れて解錠し扉を開けると、中から夕食の良い匂いがした。
それと同時に、廊下の向こうから急いであなたがこちらに駆け寄ってくる。
「あっ、ヴィクトル! おかえり〜。お疲れ様! 疲れたでしょう? こんな遅くまで。大丈夫?」
気遣いながらも、自分の帰りを心から喜ぶあなたの笑みを見て、ヴィクトルはその場から動けなくなった。
「⋯⋯ん? どうしたの、ヴィクトル。調子悪い? 熱?」
エプロンをかけたままあなたの温かい手が額にぴたりとくっつく。
彼の瞳は虚ろだった。
だがすぐに、目元はうっすら赤く染まり、あなたのことを広い腕で包み隠すように抱きすくめる。
「わぁっ! 大丈夫? ねえ」
あなたは彼の背中をさするように抱きしめ返した。
大柄だから体重をかけられると落ちそうになるが、彼の様子のおかしさをすぐに感じ取った。
「⋯⋯名無しちゃん、俺は⋯⋯」
「うん、どうしたの? ねえちょっと、心配だよ。何かあったの? いいからこっちに来て。もう大丈夫だよ」
なぜか励まされながら、ヴィクトルは手を引かれてリビングへ連れられた。
こんな状況で情けないところを見せるなんてことは、一切考えてなかった。
しかしあなたの包容力に、彼は自身を保とうと、崩れないように必死で踏みとどまっていた。