第16章 真相編
「それで、事実なのか」
「私だってひどい事言われましたよ。馬鹿にしてるのかなって思ったぐらいです。こちらだけの問題にされるのは納得いきません」
ヴィクトルは鋭い目元を反射的にひきつらせたが、前のめりになるミーガンは気づかない。
「別に問題になりませんよね、こんなことで処分されるんですか?」
反抗的な黒目がヴィクトルを捉えても、彼は何の感情も示さなかった。
「君がしたことは俺の婚約者に対する侮辱だ。これは大きな問題だよ、ホランド君。社内の人間が社外の者に対して行う振る舞いとしても、とても看過できることじゃない」
そう言って、彼はミーガンを冷たく見下ろす。
「俺は君を処分する係じゃないんでね。だがこの件は法務部とも共有される」
「なっ⋯⋯どうしてですか、そんな問題にするようなことじゃ――」
彼女は初めて分かりやすく焦りを浮かべた。
「私はただ意見しただけです! それを大げさに受け取ったのはあの人のほうじゃないですか! 私はあなたを尊敬しています、この四年間、部署は違うけど、本当に凄い方だなって部長のことをずっと見てきたんです!」
ミーガンがヴィクトルのほうへ身を寄せ、瞳を潤ませて懇願をする。
するとヴィクトルは書類を彼女に手渡した。
「ああそう。俺は君のことはよく知らない。ただ、一緒に仕事をすることはもうないだろうな。俺が部下にひとつだけ求めるものを君は持っていないから。それは「誠実さ」だよ」
そう告げたヴィクトルは踵を返し、デスク前に腰を下ろした。
もう彼の視界に入らなくなったミーガンは、まだ現実を理解できない表情のまま、震えて立ちすくんでいた。