第15章 クリスマス編
「思ったより顕示欲が強いのね」
「えっ⋯?」
「空回りしてません? 浮いてますよ」
黒く細めた瞳に告げられるが、あなたの心は冷えていく。
彼女の完全な悪意が伝わった。
「ああやって幹部と簡単に繋がれてすごいですね」
「⋯⋯ええと、彼の仲間として紹介頂いたので」
「ふふ、そう。でも勘違いしちゃうでしょう? ただのブティック店員なのに」
容赦ない言葉が、柔らかい心に刃物のように突き刺さる。
彼女は攻撃したいのだ。傷つけて、打ちのめしたい。そんな苛立った思いが、蔑んだ目つきと口元から伝わる。
ここで言い返しても、何も生まれない。この人とは無関係だし、ヴィクトルとの関係も知らないからだ。
彼の顔が浮かんで、あなたは段々、自分の不甲斐なさに押し潰されそうになっていった。
「どうせ彼のお金目当てでしょう? いるわよねそういう女。何も持ってないくせに、男で這い上がろうとするの」
「違いますよ。私達はそういうんじゃないです」
自分だけでなく彼をも馬鹿にされたように感じ、瞬間的にカチンときたあなたは彼女を見据えた。
「あなたこそ、彼のことを地位とかお金で見てるんじゃないですか? だからそういう考えになるんでしょう」
「⋯⋯はっ? なに言ってるの。話をすり替えないでくれない?」
言い返されると思ってなかったのか、ミーガンは顔の中央を歪めた。
あなたは沸々と怒りがわいてくる。ヴィクトルのことをそんなふうに捉えられる筋合いはないのだ。あんなに心が深くて優しい、愛情に満ちた人を。
「たとえ彼がクビになったって、何もかも失ったって、私はずっと一緒にいますよ。一生そばにいるって約束しましたから」
震える声で精一杯歯向かうと、彼女は怯んだ様子だ。
だがまた、馬鹿にするような態度に変わった。
「彼は執行役員だから、簡単にクビになんてならないわよ。単なる会社員じゃないんだから。何も知らないのね」
彼女は呆れたように肩をすくませ、怒りのこもった舌打ちをしてその場から立ち去っていった。扉が無造作に閉められる。
あなたは初めて、顔をくしゃっとしてうつむいた。