第15章 クリスマス編
しかしヴィクトルはそれをじっと見つめたあと、苦笑した。
「ごめんね。社員からの個人的な贈り物は受け取らないことにしてるんだ。申し訳ないけど」
柔らかな表情でそう断ると、彼女は一瞬だけ驚きに眉をしかめた。
「いえ、でも季節的な贈り物ですから。深い意味はないんです」
「そうなのかい? じゃあ俺だけってわけではないのかな」
「あっ……! ヴィクトルだけです……他の人にはもちろん渡しませんよ」
彼女は恥ずかしそうに下を向き、初めて彼の名を呼んだ。
下の名を呼び合うのは会社でもある程度の付き合いがある者同士だけだ。
ヴィクトルは軽く顎を触り、表情は穏やかなままで口を開く。
「それは困るねえ。君と俺は部門が違うし、直接の上司と部下の関係でもないから。悪いけれど社内規則をもう一度確認してほしい。でも気持ちは嬉しかったよ、ありがとうね」
そう言って彼は軽やかに会話を終わらせた。
彼女は口をつぐんでその場に立っていたが、彼が去ろうとするとスーツの背に声をかける。
「部長!」
「なんだい?」
「もしかして、他の女性からの贈り物なんてもらったら、彼女さんが嫉妬しちゃうからですか? でも、とっても優しそうな方に見えましたけど」
ミーガンはにこりと笑顔を浮かべ、そう尋ねた。
ヴィクトルはあなたの話題が出たことで、完全に意識を変える。
彼女に振り向いて考える素振りをしたあと、彼も極上の笑みを浮かべた。
「そうだなぁ。そんな姿も見れたら嬉しいけど、考えたら駄目だよな。彼女を困らせたらかわいそうだ。興味深い意見ありがとう、ホランド君」
愛想よく微笑んだ彼は後ろ手にひらひらと手を振る。
残されたのは悔しそうに立ち尽くす若い女性社員の姿だった。