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美オヤジを誘って囲われて救われる話

第15章 クリスマス編


「一人2枚までにしてくれ頼む」
「もう食べちゃったよ、あとこれだけ」

小柄なミロはチームの先頭ポジションで、様々な指示を行う試合中は人が変わったかと思えるぐらい牽引力を発揮する人物だった。

その時の名残なのかヴィクトルはあまり強く言えないのだ。

そのあと、また一人、二人と幹部がやって来た。

会計を担う財務部長のエリオ、そして強面で寡黙な法務部長のアンドレイだ。
彼は体格が社長のフロリアンと同じぐらいよく、肉厚で長身である。格闘技の選手と見間違えるほどだった。

「どうして皆して俺の部屋に集まってくるんだ!? どこでこのクッキーのことを聞きつけた!」
「ヴィクトル、どうしたんだい。俺達はただ婚約祝いの言葉を伝えようとしただけだが」
「お前たち、何か食ってるのか。……クッキーか。どれ」

二人も近寄ってきて、デスク周りを大きな男達が囲んだ。
でかい手のひらが伸びてきて、あっという間に容器の中が減っていく。

恋人の焼き菓子が美味いと褒められ気に入られるのは誇らしく、嬉しいことだ。
きっとあなたも喜んでくれることだろう。

しかしそれよりもヴィクトルは、自分の大切な取り分がみるみるなくなっていく事にショックを隠せなかった。

「もういい……好きにしろ。俺はまだ家にあるから」
「よっしゃ! おいお前ら、全部食っていいってよ!」
「やめとけよマックス、さすがに俺もそこまで厚かましくないって。ねえエリオ。あ、ほんとは一人2枚までだって」
「君はもうそれ以上食べてないか? ミロ」
「だって美味しいじゃないか。うちはもう作らないしさ」

ミロが淋しげに家庭のことをもらしながらまた一つ嬉しそうに味わっている。
寡黙なアンドレイも黙々と食していた。

この中ではミロだけが家庭持ちで、他には社長のフロリアンもだ。その他は皆独身である。

ヴィクトルは急にいたたまれない気持ちになった。普段は飄々として簡単には本心も見せない彼だが、昔からの仲間に対しては熱いところがある。
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