彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】
第7章 番外編 七海は彼女との時間を邪魔されたくない
「……これ、は」
「あんたが『七海建人』として完璧に振る舞ってた頃、あの子はこうやってよく私の前で、あんたの名前を呼びながらボロボロに溶けてたんだよ。……どう? 独占欲、刺激されるでしょ」
家入は勝ち誇ったように笑った。
七海は無言のまま、何度も、何度もその動画を再生した。
アルコールで火照った彼女の頬、潤んだ瞳、そして、自分の名前を呼ぶ震える唇。
ホワイトデー当日、彼女は五条の隣にいる。
その事実が、七海の心に冷徹な火をつけた。
「……家入さん。この動画、私の端末に転送して下さい」
「いいけど、高くつくよ?」
「………いくらでも、払いましょう。……一刻も早く、彼女を捕まえて、昨日言った『宣告』を全うしなければ気が済まなくなりました」
七海の瞳には、もはや「紳士」の面影など微塵もなかった。
ただ、一人の女を完膚なきまでに愛で、壊し、自分だけのものにしたいと願う、狂おしいまでの執着が渦巻いていた。
「……まだあるよ。こっちは付き合い始めてすぐ、あんたが任務で一週間会えなかった時のやつ」
家入は慣れた手つきで、次々とスマートフォンの画面をスワイプしていく。
動画の中のは、アルコールの力を借りて、七海への募る想いをこれでもかと吐き出していた。
「……早く、見せなさい。……次だ」
七海の返答は、次第に短く、熱を帯びたものに変わっていく。
手元のグラスは、家入が注ぎ足すたびに空になり、チェイサーすら拒んで強い酒を煽り続けていた。
空腹に染み渡るアルコールと、愛しい女の無防備な告白。
その相乗効果は、鉄の自制心を持つ一級術師を、確実に蝕んでいた。
気がついた時には、七海は珍しくカウンターに突っ伏していた。
「おやおや。……限界だね、七海」
家入は、力なく項垂れる七海の肩を軽く叩いた。
ハイペースで強い酒を飲み続け、さらに精神的な「毒」を大量に摂取したツケが回ったのだ。
「…………。…なぜ、貴方は……私の隣にいない……」
低い、地這うような声に家入はニヤリと笑うと、すかさず自分のスマートフォンを動画モードに切り替え、七海の至近距離に構えた。