彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】
第7章 番外編 七海は彼女との時間を邪魔されたくない
薄暗いバーのカウンターで琥珀色の液体を一口で流し込み、七海はグラスを硬い音を立てて置いた。
「……前置きは結構です、家入さん。早く見せてください」
「せっかちだねぇ、七海。酒の味も分からないくらい余裕がないわけ?」
家入は煙草を指に挟み、灰皿にトントンと灰を落としながら、楽しげに目を細めた。
「余裕がないのは、誰のせいだと思っているんですか。……大体、バレンタインのあの日、貴方たちが仕組んだ『余計なこと』のせいで……」
「あはは、あれね。五条から聞いたよ? 、翌朝歩けなかったんだって? 随分と、……いや、想像以上に激しかったみたいじゃない」
家入の揶揄うような視線に、七海は苦虫を噛み潰したような顔をして視線を逸らした。
「………黙秘します。貴方に話すようなことではありません」
「隠したって無駄だよ。五条が逐一報告してくるし、何よりあの子を見れば、あんたがどれだけ理性をかなぐり捨てたかくらい、医者じゃなくても分かる」
家入はクスクスと笑い、三杯目のグラスに手を伸ばした。
七海の眉間の皺が一段と深くなる。
その様子を存分に愉しんだ後、彼女は「……まあ、いいや。約束だしね」と、スマートフォンの画面を操作した。
「これ。あんたと再会して、付き合い始めるちょっと前……。あの子と二人で飲んだ時のやつ。あんた、こういうのは知らないでしょ?」
差し出された画面を、七海は吸い込まれるように見つめた。
動画の中で、は顔を真っ赤にし、テーブルに突っ伏しそうになりながら、手元のグラスを回していた。
明らかに泥酔している。
『……もう、家入さん聞いてよぉ……っ。七海さん、全然こっち見てくれないんだからぁ……っ』
画面越しの彼女の声は、とろりと甘く、泣き出しそうなほどに切実だった。
『……昔から、ずっと、好きなのに……。あんなに格っこいいのに……。……七海さんのバカぁ……、好きすぎて、死んじゃう……っ』
「……っ」
七海の手が微かに震えた。
自分の前では決して見せない、自制心の欠片もない、自分への「執着」そのものの姿。