彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】
第7章 番外編 七海は彼女との時間を邪魔されたくない
任務を終え帰路に就こうとしていた車中。
の手元でスマートフォンが短く震えた。
表示された「七海建人」の文字。
開いた瞬間に目に飛び込んできたのは、いつもの彼らしい理性的かつ簡潔な文面……の中に、隠しきれない独占欲と「宣告」が凝縮されたメッセージだった。
「ひっ……!?」
は短い悲鳴を上げ、スマートフォンの画面を伏せた。
だが、網膜に焼き付いた『腰が抜けて二度と立ち上がれなくなるまで』という文字列が、頭の中で警報のように鳴り響いている。
「ど、どうしたんですか、さん。そんなに青い顔をして」
運転席の伊地知が、バックミラー越しに心配そうな視線を送る。
「伊地知くん……。助けて、私、殺される……っ。ううん、社会的に抹消される……来週一週間、高専に行けないかもしれない!」
「えっ!? 七海さんがそんな過激なことを……? いえ、あの人は確かに怒ると怖いですけど……」
「これ見てよ! ホワイトデーのお返し、覚悟しておいてくださいって……! あの、バレンタインの時より絶対ひどいよ! 確実に抱き潰される予感しかしないんだけど!」
震える手で画面を突きつけられた伊地知は、そこに並ぶ『任務、了解しました』から始まる「静かなる怒り」を読み取り、スッと視線を前方に戻した。
「……あー。……。……頑張って、受け止めてください。それしか言えません」
「冷たい! 薄情! 大事なたった一人の元同級生が、廃人同然になってもいいの!? 」
は身を乗り出し、運転席のシートを掴んで喚き散らした。
だが、伊地知は頑なに目を逸らし続ける。
「無理です。……七海さんに睨まれるくらいなら、私は特級呪霊の群れに突っ込む方がまだマシです。それに、あの人がここまで言うのは、それだけさんのことを……その、欲しているということでしょうし」
「慰めになってない! むしろ追い打ちだよ!」
「……すみません。私にできるのは、貴方の欠勤連絡を上層部に上手く通しておくことくらいです。……あ、腰の湿布、予備が事務局にありますけど、いりますか?」
「……。……最低だよ、伊地知くん」
絶望に打ちひしがれ、シートに沈み込む。
車のエンジン音だけが虚しく響く中、彼女は現実逃避するのだった。