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彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】

第6章 番外編 七海は彼女を愛したい


医務室を出た七海の足取りはいつになく重かった。
包帯の巻かれた腕が、自身の「不注意」という名の失態を、ズキズキとした痛みで強調してくる。


(……五条さんと家入さんが既に「それ」を享受しているというのに)


事務局へ向かう廊下で、向こうから書類の束を抱えた伊地知が小走りでやってきた。


「あ、七海さん! お疲れ様です! お怪我、大丈夫ですか? 家入さんから聞きましたよ」

「……伊地知くん。ええ、大したことはありません」


七海は事務的に答え、手に持っていた報告書を伊地知に差し出した。
彼はそれを受け取りながら、ふと、思い出したように顔を綻ばせた。


「いやぁ、今日は本当に大変な一日ですが……おかげさまで、なんとか乗り切れそうです」


その「おかげさま」という言葉の響きに、七海の眉がピクリと跳ねた。


「……何か、良いことでもあったのですか」

「えっ? ああ、いえ、その……実は今朝、さんからバレンタインのチョコをいただきまして。休憩時間に我慢できずに食べてしまったんですが、いやぁ、今年も本当に美味しくて……! 疲れが吹き飛ぶとは、まさにこの事ですね」


伊地知は純粋な笑みを浮かべて語った。
そこには悪意も、五条のような計算された「うざさ」も、家入のような「愉悦」も存在しない。
ただの純粋な称賛。


「……そうですか。貴方も、既に食べたと」


七海の冷え切った声に、伊地知は「ひっ」と短い悲鳴を上げて身を硬くした。


「な、七海さん……? あの、どうかされましたか? なんだか、さっきより一段と……その…」

「……何も。私はただ、彼女がそこまで熱心に配り歩いていたという事実に感銘を受けているだけです」

「は、はあ。そうですよね! さすがさん、気遣いの達人というか…」


伊地知は七海の眼鏡の奥にある瞳が、かつてないほど「真顔」で据わっていることに気づき、ガタガタと震え出した。
彼にしてみれば七海は当然、朝一番に「特製」をもらっているものだと思い込んでいる。



「伊地知くん。……仕事に戻りなさい。私はこれから、少し『個人的な用件』を片付けてきます」



「は、はいぃっ! お疲れ様ですっ!!」



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