彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】
第5章 彼女は七海建人と幸せに暮らしたい
「皆さんは、頑張っていますか」
「ああ、みんな見違えるほど逞しくなった。あの子たちなら大丈夫さ。……さて、そろそろ時間だ。僕もこれから、ちょっと大きな『掃除』に行かなきゃならないんでね」
「……五条さん」
七海の声が、かつての術師としての鋭さを一瞬だけ取り戻した。
五条は、まるですべてを悟っているかのような、明るい声で締めくくった。
「七海、。……君たちが選んだその『普通の幸せ』を、絶対に手放すんじゃないよ。……じゃあね。末長く、お幸せに!」
それが、五条悟との最期の会話になった。
それから約一ヶ月。
たちは、クリスマスの翌日、家入からの短い電話を受けた。
「……終わったよ。全部ね」
家入の声は、ひどく掠れていた。
宿儺の討伐。
呪術テロの終結。
そして――。
「……五条が、死んだ。あいつ、最期まで馬鹿みたいに笑って逝きやがったよ」
受話器を握る七海の指が、白くなるほど強張った。
は大きくなったお腹を抱え、ただ遠い空の下で散った「最強」の男のことを想った。
彼は自らの命を賭して、たちが守りたかったこの「平穏な世界」を繋ぎ止めてくれた。
「……建人さん」
「……ええ。行きましょう。さん」
七海は静かに立ち上がった。
呪力も術式も失った今のたちに、何ができるわけでもない。
けれど、大切な友の、そして恩人である仲間の旅立ちを、見送らないわけにはいかなかった。
二人は、無理のない範囲で飛行機を手配し、再び日本の地を踏んだ。
葬儀の場、遺影の中の五条は、あの日の電話と同じように、どこまでも不敵で、楽しそうに笑っていた。
焼香を終えた七海は、静かにその写真を見つめ、心の中でだけ語りかけた。
(五条さん。貴方が守ったこの世界で、私たちは……貴方の分まで、泥臭く、幸福に生きてみせます)
雪の降る東京の空を見上げながら、七海はの肩を優しく抱き寄せた。
彼が守り抜いたこの平和な空の下で、二人は新しい命を育てていく。
「……さん。帰りましょう。私たちの、あの場所へ」
「はい、建人さん」
失ったものはあまりにも大きく、けれど、繋がれた命の灯火は何よりも明るく、私たちの行く道を照らしていた。