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彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】

第5章 彼女は七海建人と幸せに暮らしたい


「……状況は分かりました。今の私には、もはやこの場に留まる権利も、力もないということですね」


七海の声は、驚くほど静かだった。
家入が語った渋谷の惨状、そして伊地知の口から出た衝撃的な事実の数々。
それを聞いてもなお、彼は感情に溺れることなく、今の自分が成すべきことを見極めようとしていた。


「ええ。今のあんたは、呪霊の姿も見えない、術式も持たない『ただの人間』だ」

家入は煙草を咥え、火をつけずに続けた。


「ここに残れば、足手まといになるだけじゃない。あんたという『弱点』を狙われることだってある。……それは、やその子にとっても、最悪の事態だ」

「……わかっています」


七海は、の手をしっかりと握り締めた。
かつて呪術師として戦っていた頃の、張り詰めた糸のような鋭さはもうない。
けれど、その代わりに、一人の守るべき者を持つ男としての、深く重い覚悟がその瞳に宿っていた。


「日本は今、未曾有の混乱の中にあります」


伊地知が、包帯の巻かれた顔を伏せながら、震える声で言った。


「呪術テロの影響で、治安は加速度的に悪化していくでしょう。七海さん、さん。……体力が戻り次第、一刻も早く出国してください。ルートは私が、何としてでも確保します」

「伊地知くん、ありがとうございます。……すみません、すべてを君たちに押し付けるような形になってしまって」


七海の謝罪に、伊地知は力強く首を振った。


「何をおっしゃるんですか。あなたが、あなたがこうして生きていてくれることが……どれだけ、僕たちの救いになるか」

「七海」



家入が、窓の外の灰色の空を指差した。


「あの子たちは、まだ地獄の中にいる。でもね、あんたが向こう側で『普通の幸せ』を掴み取ること、それが地獄に残る連中への、一番の餞別になるんだよ。……呪術師の行き先が、死滅か発狂かだけじゃないってことを、あんたが証明しな」

「……そうですね。分かりました」


七海はを振り返り、優しく、けれど断固とした口調で告げた。

「さん。行きましょう。体力が戻り次第、すぐにです。……私たちは、生きなければならない。呪いの一切届かない場所で、この子に、日の光を浴びせるために」

「はい、建人さん……」



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