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彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】

第1章 彼女は七海が幸せになってほしい 


「灰原、先輩……?」




の膝がガクガクと震える。
いつも「ちゃん!」と呼んでくれたあの声が、もう二度と響かない。
駆け寄ろうとするを、血の匂いのする七海の腕が制した。


「見ない方が、いい……」


「嫌です、離してください! 灰原先輩、お土産……お土産楽しみに待ってて、って…言ったのに!」



の声が、静かな医務室に響き渡った。
夏油がゆっくりと振り返った。
その瞳は、疲れ果てていた時よりもさらに深く、暗い淵に沈んでいた。



「……すまない、。私が……私達がもっと早く気づいていれば」


「夏油先輩、そんな……。だって、灰原さんは……さっきまで、あんなに元気だったのに……っ」



夏油は、の泣きじゃくる肩に触れようとして、その手の汚れを見て、力なく下ろした。
彼は、何も言わずにただ、灰原の亡骸を見つめ続けていた。
その横顔には、もう以前のような優しい光は一切宿っていなかった。

七海が、絞り出すような声で言った。



「……もう、行きましょう。さん。ここにいても、彼は……。灰原は、もう起きてくれません」



七海の手が、震えていた。
の頭を撫でてくれた、あの温かくて大きな手は、今は冷たく強張っていた。



「嫌……七海先輩、私……」


「戻るんです。……戻りなさい」



七海に促され、は泣き崩れながら、夏油が静かに白い布を被せ直すのを見ていた。

憧れていた先輩たちの背中は、あの日見た時よりもずっと、痛々しく、小さく見えた。
顔を上げないまま、七海は絶望の淵から、呪いのような言葉を吐き出した。





「……呪術師は、クソだ」





その言葉は、憧れていた彼の「かっこよさ」など微塵もなく、ただただ重く、暗い、現実の泥の味がした。
この時、遠くで見守るように、を可愛がっていた夏油の心が、この瞬間に音を立てて崩れ落ちたことを、まだ誰も知らなかった。


ただ、高専の放課後の陽光は、残酷なほどに青空が変わらずに差し込んでいたーー。



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