彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】
第1章 彼女は七海が幸せになってほしい
高専の空気は、数時間前とは打って変わって、ねっとりと湿った絶望に包まれていた。
「……嘘。そんなの、嘘だ」
は、医務室へと続く廊下を、足の感覚がないまま走っていた。
伊地知から聞いた言葉が、頭の中で壊れたレコードのように繰り返される。
「二級任務が、産土神の……。灰原さんが、七海さんが……」
医務室の重い扉を開けた瞬間、漂ってきたのは、刺すような消毒液の臭いと、重苦しい血の匂いだった。
「……、さん」
掠れた声。
壁際に座り込み、包帯を巻いた腕を押さえている七海がいた。
いつもの完璧に着こなしてた制服は破れ、返り血に汚れ、その瞳からは、が憧れていた「大人の余裕」など、欠片も消え失せていた。
「七海……先輩……? 灰原先輩は……っ」
の問いに、七海は答えることができなかった。
ただ、絶望を形にしたような顔で、部屋の奥に置かれた布の塊を見つめていた。
そこには、夏油が、魂を抜かれたような姿で立ち尽くしていた。
夏油の視線の先――布から覗く「それ」は、つい数時間前まで笑っていた灰原の、冷たくなった下半身のない姿だった。