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彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】

第5章 彼女は七海建人と幸せに暮らしたい


――ガタッ!!


「……っ、げほっ……!」


次に目を開けたとき、鼻をついたのは消毒薬の匂いだった。
臨時開設された医局。
見慣れない場所だったけれど今は何よりも愛おしい静寂。



「……!? それに、七海……!」


「……建人さんを、お願いしますっ…!」



椅子を蹴立てて立ち上がる家入の驚愕した顔。
けれど、無事に送り届けたという安堵が胸を満たした瞬間、約束されていた「対価」の時間が始まった。

指先から、感覚が消えていく。



脳裏を埋め尽くしていた「渋谷の惨劇」の記憶が、そして「私が別の世界から来た」という全ての知識が、恐ろしい速度で削り取られていく。



(ああ、忘れていく……。私が誰で、彼をどうやって助けたのかも……)


視界が急速に狭まる中、の腕の中で、七海が力なく目を開けた。
彼からもまた、黄金色の光が溢れ出し、呪術師としての力そのものが、対価として空へと吸い込まれていく。


「……さん……貴方は……」


「……し、……幸せに、なって……」



それが、わたしの言えた最後の一言だった。
お腹の中にあった、呪力という名の輝きも消え、ただの小さな、けれど確かな命の重みだけが残る。



寿命が半分削り取られる激痛と、自己を喪失する恐怖。
けれど、目の前で家入の処置を受け、確かに「生きて」呼吸をしている彼の姿を見れば、そんな代償はあまりにも安すぎた。


「……しっかりしろ、! 七海は助かる、私が助けてやるから!」



家入の叫びを遠くに聞きながら、私の意識は深い、深い眠りへと落ちていったーー。




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