彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】
第4章 彼女は七海の幸せを心から願っていた
「最小のリスクで、最大の結果を得る。……死んだという結果を消すんじゃない。死の淵にいた彼を、今この瞬間の『隣』にスライドさせる……とかね」
「スライド……。そんなことが……」
「理屈は後からついてくる。大事なのは、君が『どの道を通って彼に会いに行くか』だ。店主に言われた二択に乗る必要なんてない。三枚目のカードは、いつだって君の手の中にあるんだから」
九十九は再びエンジンをかけると、排気音に負けない声で言い放った。
「自分なりに解釈しな。君が払うべきは『子供の命』じゃない。君の『一生を懸けた覚悟』……それだけで十分なはずだよ。……あばよ、お嬢さん。いい月夜になるといいね!」
空には、冴えざえとした満月が昇り始めていた。
は部屋の中で、七海の愛用していたネクタイを強く握りしめた。
(死を否定するんじゃない。彼が辿り着いた『終わり』を、別の『続き』へと繋ぎ直す……)
九十九さんの言葉を自分なりに解釈したとき、不思議と恐怖は消えていた。
対価はお腹の子じゃない。
この子と一緒に彼を迎えに行く。
そのために必要なのは、己れの魂を削ってでも彼をこちら側へ引き寄せる、強固な「定義」だ。
「……必ず迎えに行きます、建人さん」
は鏡の中の自分に、自分の中に宿る新しい命に語りかけた。
窓から差し込む月光が、部屋の隅にあの『店』への入り口を朧げに描き出していく。