彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】
第4章 彼女は七海の幸せを心から願っていた
「『七海建人』を死の淵から引き戻す。一度失われた命を現世に繋ぎ直す……。それがどういうことか、分かっているわね?」
「分かっています。対価が必要なんでしょ。私に払えるモノなら腕でも足でも、何だって差し出す!だから……!」
「いいえ」
侑子さんの低い声が、私の言葉を遮った。
彼女はゆっくりと立ち上がり、私の目の前で屈むと、膨らんだ私のお腹に、細く長い指先を這わせた。
「貴方では、彼の命の代わりにはならない。等価ではないからよ」
「……え?」
「彼をこの世に戻すための対価。それは――貴方の中に宿る、その『新しい命』よ」
ーードクン、と心臓が跳ねた。
お腹の奥が、冷たくなったような気がした。
「嘘……そんなの、そんなのってないわ!」
私は叫び、自分のお腹を庇うように抱きしめた。
「彼は……建人さんは、最期に虎杖くんに『あとは頼みます』って言ったの。それは呪いでもあり、願いでもあった。彼が守りたかったのは、未来よ! この子の未来も、その中に含まれているはずなのに……っ!」
「そうね。彼は未来を託した。けれど、貴方は『今、ここにいる彼』を望んだ。……死者を呼び戻すという禁忌を犯すには、それ相応の、輝かしい未来の芽を摘み取らなければならない。それがこの世界の理よ」
侑子さんの瞳には、憐れみも嘲笑もなかった。
ただ、鏡のように残酷な事実だけが映っている。