彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】
第3章 彼女は七海と幸せになりたい
「……建人さんは? 彼は、どこ? 怪我をして、硝子さんのところで眠ってるんでしょう?」
家入は、の瞳を真っ直ぐに見つめることができず、視線を床に落とした。
「……七海は、……殉職した」
「……嘘。嘘よっ……」
「最期に、虎杖にアンタと子供のことを頼むって……そう言い残して、あいつは……」
「嘘だっておっしゃってください!!」
の絶叫が静かな部屋に響き渡った。
彼女は家入の肩を掴み、狂ったように揺さぶった。
「すぐに帰るって……お祝いするから待ってろって、約束したの! 建人さんは、約束を破るような人じゃない! あの人が私を……この子を置いて逝くわけないじゃない!!」
「……っ」
「返して……建人さんを返してよ!!」
はそのまま床に崩れ落ち、喉が張り裂けんばかりに泣き叫んだ。
昨夜耳元で聞こえた声。
割れたグラス。
あれは、彼が命を賭して届けに来た最期の「さよなら」だったのだ。
「……なんで……なんで私だけ置いていくの……。お誕生日おめでとうって、まだ言ってもらってないのに……っ」
床に額を擦り付け、子供のように声を上げて泣きじゃくる。
家入はそっと彼女の背中に手を置いた。
かける言葉など何一つ見つからなかった。
ふと、は泣き腫らした瞳で自分のお腹を見つめた。
建人が命を懸けて守った、この小さな命。
虎杖に託してまで彼が繋ぎたかった未来が、今、自分の中に確かにある。
「……建人、さん……っ、うあぁぁぁ……っ!」
愛する人の不在という名の地獄。
けれど、彼女はその地獄の中で、彼が遺した温もりを抱えて生きていかなければならない。
主を失った指輪が、朝陽を浴びて皮肉なほど美しく輝いていた。