彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】
第3章 彼女は七海と幸せになりたい
「……建人さん? なにか、あったの?」
「渋谷です。……ただ事ではありません。五条さんが、封印された可能性があると」
「えっ……!?」
の顔から血の気が引く。
現代最強の封印。
それが意味するのは呪術界の、あるいは世界の終わりの始まりだ。
「嫌だ……行かないで。今日は、今日だけは……!」
思わず七海の袖を掴んだの手を、彼は大きな掌で包み込みゆっくりと、けれど拒絶できない強さで解いた。
「本当は、行きたくはありません。こんな大事な日に愛する妻を置いていくなど、言語道断です。……ですが、行かなければ私たちの子供が生きる未来すらなくなるかもしれない」
七海はクローゼットから呪術師の正装――あのアスコットタイを素早く締め、呪具を手に取った。
そ玄関で震えるを力強く抱き寄せその耳元で深く、言い聞かせるように囁いた。
「……ケーキは先に食べていて構いませんよ。ですが、私がお祝いの言葉を言うまでは、眠らずに待っていてください」
「約束して、建人さん……絶対、すぐに帰るって」
七海は一度だけ強く彼女を抱きしめた後、その肩に顔を埋めた。
「ええ。すぐに帰ります。……愛していますよ、」
それが、彼と最後にかわした言葉と熱だったーー。
七海は振り返ることなく、夜の闇へと消えていった。
主を失ったリビングには、温かかった料理の香りと、出番を失ったケーキだけが残された。
「……待ってるから。信じて、待ってるからね」
はお腹の中の命を守るように丸まり、帰ってこない足音を待ち続けた。
左手の指輪が、窓の外で怪しく光る渋谷の空を反射して寂しく輝き続けていた。
この夜が、二人にとっての「さよなら」になることも知らずにーー。