彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】
第3章 彼女は七海と幸せになりたい
2018年10月31日。
街がカボチャのランタンと仮装した人々で賑わい始める頃、七海のマンションはそれとは無縁の穏やかで温かい空気に包まれていた。
「建人さん、あまり無理しないで。私も手伝うよ?」
「座っていてください。今日はあなたの誕生日であり、私たちの記念日です。妊婦を働かせるほど私は落ちぶれていませんよ」
エプロン姿の七海は、手際よくキッチンで腕を振るっていた。
の体調を考慮し、塩分を控えつつも素材の旨みを引き出したスープに香ばしく焼き上がった肉料理。
ふっくらと膨らんだのお腹を、彼は時折愛おしそうに、壊れ物を扱うような手つきで撫でた。
「……幸せですね。あの日、あなたの元へ戻って本当に良かった」
「私も。建人さんが隣にいてくれるだけで、もう何もいらないくらい」
七海はそっと彼女に深く、慈しむような口づけを落とした。
食卓には、彼が特別に予約していたバースデーケーキが出番を待つように鎮座している。
ロウソクを灯し、紅茶を淹れれば、完璧な夜が始まるはずだった。
その時、静寂を切り裂くように無機質な電子音がリビングに響いた。
七海の懐で震える高専からの緊急用スマートフォン。
表示された名前を見た瞬間、彼の表情から温度が消え一気に「術師」の顔に戻った。
「……私です。……ええ。……。……分かりました。すぐ向かいます」
通話を終えた七海は吐き捨てるように深く溜息をついた。
その横顔にはかつてないほどの嫌悪感と、不吉な予感が滲んでいる。