彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】
第2章 彼女は七海に幸せになってほしい
七海が呪術師に戻ってから、高専の空気はどこか引き締まったものに変わった。
「先輩と後輩」から「同僚」へと肩書きを変え、任務の合間に連れ立って食事へ行くことも増えていた。
けれど、距離が縮まれば縮まるほど、私の悩みは深くなるばかりだった。
「……はぁ。七海さん、全然隙がないんだもん」
高専の資料室。
私は机に突っ伏して、大きなため息を吐き出した。
「おやおや、。またナナミンへの片想いに身を焦がしてるわけ?」
棚の陰から、ひょっこりと五条先輩が顔を出した。
「……からかわないでください。五条さんかが無理やりセッティングしてくれたあの日から、全然進展してないんですから」
「えー? ナナミン、君のこと相当大事にしてると思うけどな。任務の割り振りだって、君に危険がないように僕に釘刺してくるし」
「それは、同僚としての責任感ですよ。……今はもう、完璧な『信頼できる同僚』の仮面を被っちゃってて」
私が唇を尖らせると、ちょうど資料を抱えた伊地知が部屋に入ってきた。
「あの、お話中失礼します……。さん、七海さんのことでしたら、私も少し思うところがありまして」
「伊地知くん! 何か知ってるの?」
勢いよく詰め寄る私に、伊地知はビクッと肩を揺らしながらも、眼鏡を押し上げた。
「いえ、その。七海さん、さんと食事に行った翌日は、明らかに穏やかなんです。……普段はもっと、こう、『労働はクソだ』という殺気を感じるのですが」
「……それ、ただ機嫌がいいだけじゃない?」
五条がケラケラと笑いながら、私の頭をポンと叩いた。
「ナナミンは一回失敗して、君を傷つけたって思い込んでるからね。自分から踏み込むのは相当ハードル高いと思うよ。あいつ、真面目すぎてクソでしょ?」
「……クソじゃないです。素敵なんです」
私が即答すると、五条は「はいはい、ごちそうさま」と肩をすくめた。
「でも、本当。私、どうすればいいんだろう」
「なら、お酒の力でも借りたら?」
五条の無責任な提案に、伊地知が「七海さんに怒られますよ……」と青ざめていた。
それでも、私は心に決めた。
今度少しだけ雰囲気の良いお店に誘ってみよう。
あの凍りついた夜を溶かした私の熱を、彼が本当は忘れていないことを、確かめるために。