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彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】

第2章 彼女は七海に幸せになってほしい


灰原を守れなかった。
を傷つけ、逃げ出した。
そんな自分でも、誰かに感謝される道がある。
ならば、せめてその力を使って、もう一度あそこへ戻るべきではないのか。



七海はパン屋を出ると、人混みの中でスマートフォンを取り出した。
履歴の奥深くに眠っていた、かつての先輩――五条悟の番号。
迷いは、もうなかった。
プルル、と数回の呼出音の後、聞き慣れた軽薄な声が響いた。


『お、ナナミン? 意外と早かったね、気が変わるの』

「……五条さん。先日の話ですが」

『うんうん、聞かせてよ』

「戻ります。……どちらもクソなら、少しでもマシなクソでありたい」


七海の言葉に、電話越しの五条がニヤリと笑ったのがわかった。


『合格。待ってたよ、ナナミン。……で、一番に誰に会いたい?』


「……決まっているでしょう。……彼女です」







五条先輩からの呼び出しは、いつだって唐突で、ろくなことがなかった。


「、今日の夜、空いてるよね? 大事な話があるから、指定した店に必ず来ること。遅刻厳禁!」


一方的なメッセージに溜息をつきながら、は渋々、指定された個室のあるレストランへと向かった。
少し背伸びをしたような格式高い設えに、ますます嫌な予感が募る。


「……また変な任務の押し付けじゃないでしょうね」


愚痴をこぼしながら、給仕に案内された扉を開けた。
けれど、そこに座っていたのは、目隠しをしたあの男ではなかった。


「……遅かったですね。五条さんから、時間は守るようにと言われませんでしたか」


低く、落ち着いた、耳の奥にこびりついて離れなかったあの声。
椅子の背にかけられた見慣れないスーツ。
そして、眼鏡の奥でこちらを静かに見つめる、鋭くも知的な瞳。


「七海、先輩……?」


の足は、その場に縫い付けられたように動かなくなった。
卒業式の日、冷たく背を向けて去っていったあの人が、どうしてここにいるのか。
混乱で頭が真っ白になり、心臓の音がうるさいほどに脈打ち始めた。


「さん、そんなに驚くことですか。……とりあえず、座りなさい」


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