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彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】

第1章 彼女は七海が幸せになってほしい 


窓の外が白み始めた頃。
ようやく動きを止めた二人の間には、汗と、涙と、精の匂いが混ざり合った、濃厚な空気だけが漂っていた。


「……は、ぁ……、っ……」


七海は、の胸元に顔を埋めたまま、荒い息を吐いていた。
朝の光が、現実を連れてくる。
灰原がいない現実。
自分がまた、呪術師として汚れ、生きていかなければならない現実。


「……七海先輩」


の掠れた声に、七海は顔を上げることができなかった。
あれほど激しく彼女を貪ったのに、心はまだ、痛いくらいに冷え切っている。


「……私は、最低です。……あなたを、こんなに傷つけて……」

「……傷ついて、ないですよ。……先輩が、まだここにいてくれるなら、それで、いいんです……」


は震える指で、七海の髪を撫でた。
その優しさが、今の七海には何よりも辛かった。

熱が覚めた七海はの顔を見ることさえしなかった。


「……あなたに、最低なことをしました。……この事は忘れてください」

とだけ言い残して、逃げるように己の部屋を去ったのだったーー。








あの日、朝焼けの中で交わした抱擁が、まるで遠い夢だったかのように、高専を包む季節は残酷な速さで巡り、周囲の世界は音を立てて崩れ去っていった。


灰原の死、そして、尊敬していた夏油の離反。
守るべき対象だったはずの非術師を屠り、姿を消した夏油の背中は、残されたたちに拭い去れない影を落とした。


「七海先輩……」


廊下ですれ違うたび、は彼に声をかけたけれど、七海はかつてのように隣で足を止めてくれることはなかった。
その瞳はいつも遠く、何もない虚空を見つめているようで。
を見ても、そこには親愛ではなく、あの日犯した過ちへの悔恨と、終わりのない呪いへの諦念だけが宿っていた。


「……さん。あまり私に関わらない方がいい。私はもう、まともな人間ではありません」


突き放す言葉は冷たく、けれどその声は震えていた。
支えたいと願うの手は、いつも空を切り、彼が自らかけた呪いの檻に届くことはなかった。




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