第1章 泡の飛沫
「なぁ、ほんまは妬いとるんやろ?」
腕を引いて、副隊長の方を向かせられる。覗き込んできた彼は、私の顔をジッと見た。顔に出すはずがないだろう。面倒臭いだろうに、妬かせたいの?
「いいえ」と返して見つめ返す。その返答が気に食わなかったのか、副隊長の眉間に皺が寄った。
「はぁ…ほんま可愛ないわ。ちょっとは妬いたらどうなん?"私以外としないで"って泣いて縋ってきたら、考えなくもないのに」
何を考えるの?浮気のこと?絶対、面倒臭いと言うでしょ。どうして私は、いつまでもこの男が好きなのだろう。
頬を包んだ指が軽く撫でる。少し力が入った指に、副隊長の機嫌が悪くなったことに気付いた。なんで私じゃなくて、あなたが機嫌を悪くするの。
「君の目の前で、他の女抱いたろか?」
心臓が軋んだ。目を瞑って息を吐き出す。大丈夫、私はこんなことで泣かない。無意識に拳を握っていた。手の平に爪が食い込んで、骨を突き刺す。
「そんなもの、誰だって見たくないですよ。性癖が歪んでる人だけです、他人の行為を見たいのなんて」
「隊員はやめてください」と釘を刺すと、副隊長は逃げるようにお風呂に入りに行った。
仮にも彼女のはずなのに、どうして私は彼氏にあんなことを言われなきゃいけないんだろう。胸がズキズキと痛んだ。